骨まがりの考え

骨まがりの考え

嫁にモテたい男のブログ

人は合理的であることよりも、非合理でもクールでありたいと思う生き物だ

最近理不尽だなと思うことがあった。まったく合理的でない。

男性の下着の変遷を調べていたら見えてくることがあった。

ファッションと制約

日本航空系列のLCCであるZIPAIRの制服が3年前に話題になった。

ZIPAIR、機体・制服デザイン発表会。組み合わせ自由な制服は機能性重視でスニーカーを採用 - トラベル Watch

CAの制服といえば、タイトなスカートパンプス。そんなイメージ強いだろう。この新しい航空会社の制服は「機能性」を重視しており、パンツスタイルに足元はスニーカーといういで立ちだ。彼ら/彼女らの本来の仕事は航空保安要員であることや、長時間の立ち仕事であることを考えると最もな発想である。

できればスーツはきたくないし、革靴を履くとしてもASICSのウォーキングタイプを好む私としては、この判断をした経営者にアッパレを送りたい。

長時間パンプスで労働をしていたら足首を痛める恐れがあるし、バランスを取ろうと身体の他の箇所に変な力が入り身体全体のねじれにつながる。仕事中の服装が原因でけがでもしたら、怪我した本人はもちろん、怪我した社員を守らないといけない企業にとっても大きな痛手である。であるならば、ZIPAIRが取ったように、怪我の少ないスニーカーや動きやすいパンツスタイルの制服を採用するのは極めて合理的な判断であるように思われる。しかし、多くの航空会社ではCAはタイトなスカートにパンプスというのが一般的である。これは機能性というよりも、CAとその制服をまとったいで立ちから醸し出されるイメージを優先した結果だろう。ファッションには、機能性の点から考えれば非合理的なことを優先することがままある。

トランクス V.S ボクサーパンツ

先の例は女性のCAの制服に関する事例であったが、男性の服装でも同じことが起きている。下着である。

多くの男性は生まれた直後はおむつを、幼少期には母親に与えられたブリーフパンツを、小学校ごろからトランクス(柄パン)を履き始め、青年期になるとボクサーパンツ(ボクサーブリーフ)を常用するようになる傾向がある*1

おむつは別として、ブリーフ、トランクス、ボクサーパンツといった男性用下着のうち、最初に登場したのはトランクスであった。20世紀初頭に全身を覆うユニオンスーツと呼ばれる下着が上下に分離したものが走りである。それが第一次世界大戦期にショートパンツ化し、1920年代ごろになって現在のトランクスの基本形が形成された。

一方、ブリーフが登場するのは、トランクスの登場から10年ほど時が進んだ1930年代中頃のことである。シカゴの下着メーカーが販売したことが始まりである。その後爆発的な人気を博したブリーフは、トランクスから男性用下着の座を奪い取り、幼年層から老年層まで幅広く普及した。

差別化を図りたい若者

先ほど述べたようにブリーフが男性用の下着の王となり、お子様から老人の下半身を覆うようになると、購買力のある青年層の間で、お子様やお年寄りとの差別化を図りたい集団が出てきた。その結果、ブリーフによってその座を奪われたトランクスに注目が集まることとなった。というのも当時のブリーフは白が一般的であったのに対し、色物や柄物などを取り入れたトランクスは個性を出しやすいものであり、それまで男性用下着として画一的なデザインやカラーバリエーションしか持ちえなかったブリーフとの差別化を図るうえで若者の間で受け入れられるようになった。

大衆にはやると陳腐化する

1990年代にはいるとストリートファッションの流用もあり、トランクスは世間一般に受け入れられるようになった。トランクスがかつてブリーフとの差別化を図った青年層のみならず、他の世にも普及するにつれ、流行に敏感な若者たちにとっては陳腐化されたものになってしまった。その結果、かつてブリーフの普及によって生じたのと同じように、青年層はさらなる差別化を図るべく他の下着を求めるようになった。

その時にちょうど誕生したのが、1992年にカルバン・クラインが発表したボクサーパンツ(ボクサーブリーフ)である。トランクスのようにゆったりしたデザインではないが、ブリーフとも異なるデザインを持つボクサーパンツ(ボクサーブリーフ)は、青年層に広く受け入れられた。そしてその傾向は現在に至るまで変わりない。

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Calvin_Klein, via Wikimedia Commons, Link

機能面からみる男性用下着

以上のように、男性、特に青年期の男性を中心も、他者との差別化を図るべく、トランクス→ブリーフ→トランクス→ボクサーブリーフと着用される下着は変わってきた。若者が他人(特に他の世代)と差別化を図りたい理由としては、同年代の同性、異性にダサいと思われたくない、とうのが大きな理由であろう。現在では多くの若者がボクサーパンツ(ボクサーブリーフ)を履いているが、この傾向は機能面からみて合理的な判断と言えるのだろうか。

ワコールの男性用下着のブランドであるBROS BY WACOAL MENS が20代~50代の男性5万人に実施したアンケートによると、男性用下着にもとめる要素は1位「履き心地」、2位「通気性」、3位「サイズ」である。

男を上げる新たなツール!スペック自慢の快適パンツを徹底分析|下着の知識|キレイの知恵袋|ワコール直営の公式下着通販サイト Wacoal Web Store

履き心地を求めるのであれば、トランクス一強になりそうなものではあるが、一方で、男性器を大きく見せたいという理由でブリーフを選ぶケースや、公共の場では下着の中での男性器のポジションを安定させたいという理由で、トランクスではなくブリーフやボクサーパンツを選ぶケースもあるという。

ここで考えないといけないことは、なぜ男性はパンツに対して通気性を求めるのかということである。ひとつにはシンプルに通気性が悪いと股間が蒸れて不快であるということがあげられるだろう。夏場などは特に不快になりがちである。しかし、理由はそれだけではない。

もうひとつの理由は男性としての能力そのものに関することである。そもそも男性器の一部である睾丸が体内ではなく、陰嚢に囲われるかたちで体外に位置しているのは、体内にあると温度が高くなりすぎ、精子の生産能力が落ちてしまうためである。睾丸の温度を下げ、精子の生産能力を高めるために人間は身体の外に陰嚢を形成し*2たのである。

履き心地ももちろん重要ではあるが、人間という種の男性は下着に求めるべきもっとも大切な機能は通気性であり、その他の機能は本質的ではない。男性器を大きく見せたいという理由でブリーフを選ぶのは、女性とのコミュニケーションの中で男性器を大きく見せることで自分を魅力的に見せようという社会的な行為のための手段に過ぎない。公的な場で男性器のポジションが安定しないことを危惧してブリーフやボクサーパンツを好むのは、社会的な規範として公的な場で男性器のポジションチェックを行うことは不適切であるからだということに過ぎない。

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Retrato del emperador Carlos I de España (1500-1558),, via Wikimedia Commons, Link

もちろんそれらのことは現在の世の中を生きる上では大切なことでるかもしれないが、本質ではない。男性は男性としての機能を失う可能性のある通気性の悪い下着を選択し、社会的規範に合わせようとする。このような行動は非合理的であると言わざるをえない。

おわりに

男性による下着の選択の変遷から何が言えるだろうか。まず、大衆に流行すると陳腐化するということである。クールとされることであっても、広く世間一般に普及したとたん、かつて持っていたかっこよさは失われてしまい、とたんにダサいものになる。そのため、若者の中心として差別化を図ろうとする。その場合も優先されるのは他者からどう見られるかとう点であり、機能面に主眼は置かれない女性の服装だけでなく、男性の服装においてもその選好は合理的な判断に基づいて行われるわけではなく、社会的な規範に基づいて行われる。逆に言えば人間はどんなに非合理なことであっても、それはダサくなく、むしろクールだと社会的に認知されることであれば率先して自分たちの生活に組みこむのである。

話は冒頭のZIPAIRの制服に戻るが、もし制服などのドレスコードに関する規則を変えたければ、機能面など合理的な側面を強調してはならない。むしろそのような規則を作り守っていることや規則そのものが陳腐化していかにダサいことであるかを訴えることが大切であるといえよう。

参考

もしこの記事を読んであなた自身の男性としての能力にいささかの不安を感じた方へおすすめの器具。WHOによると男性のみに不妊の原因があるカップルが24%、男女ともに原因があるケースが24%であるという。男性が不妊の原因であるケースは少なくないのである。

TENGA メンズルーペ

読書

他者との差別化についての本質を描いた本だと思う。

*1:骨まがりの人生はそうだった。

*2:しかも、空気への接地面が多くなるようにしわしわだ。